彼はシトシトと降り続ける雨を見て鳴く。



…ナゼ我ガ…。



水溜まりに自分の姿を映し、ため息をついた。



「…どうしたの?」



そう声を掛け自分を覗き込む女に“やっとか…”と鳴いた。



彼女は自分の濡れた身体をギュッと抱き締めた。



その瞬間、心臓を鷲掴みにされたような…言い様のない恐怖に身が震えた。



「こんなに震えて…可哀想に…」



“そうじゃない”と思いながらも金縛りに遇ったように動けなかった。



圧倒的な力の差…。



いや、格の違いと言った方が正しいかもしれない。



彼はその存在に平伏す様に身を小さくして委ねる。



「もう大丈夫だからね。」



自分の背中を撫でる手の暖かさに彼は目を閉じた。