フロアを揺るがす程の音に誰一人として気付かない…その異変に。



危機を察知しているのは自分だけだった。



…無理だ…!彼女は守れても、ここにいる全員は…!



グラリと揺れるシャンデリアを見つめ、自分の無力さを思い知る。



…忍様だけは…!



落下してくる巨大なシャンデリアを視界に捉えながら、潤は忍を引き寄せ胸に抱いた。



「ふぇ!?…じ、潤くん!?」



…どうか…彼女を…!



スローモーションのようにただ煌めきながら近付いて来るクリスタルを睨む。



次の瞬間、辺りを風が吹き抜けた。



潤はグッと目を瞑り、衝撃に備えた。



が、衝撃どころか何も起こらなかった。



「…?…」



潤は目を開けて上を見上げる。



一陣の風に舞う無数の…純白の羽根…。



ステージのテリーが『ThankYou!』と叫ぶ声が聞こえた。



「…本当に…ありがとうございました…!」



…ハニエル様…!



潤は腕の中の忍を見て、流れる涙を抑えられなかった。