─初夏の少し湿気を含んだ風が頬を撫でる。



彼女は風で綺麗に結い上げた髪が乱れていないか心配になった。



この日の為に早朝から美容院に行ったのにと、前髪を指先で整える。


ふと見上げれば、さっきまで真っ青だった空に雲が流れて行く。



「…天気予報は晴れだったのに…」



そんな独り言も周りの友人達は気にする様子もなく、チャペルの大きな扉が開くのを今か今かと騒いでいた。



─カラーン…カラーン…!



鐘の音が鳴り響き、ゆっくりと扉が開かれる。



新郎新婦が姿を現すと、わぁ…!と歓声が上がった。



親友のウェディングドレス姿は目を見張るほど美しかった。



彼女は自分を見付けて幸せそうに微笑む。



そんな彼女を見て思わず涙ぐむと、隣に居た友人に茶化された。



新郎が新婦に何か囁き、微笑みながら一瞬見つめ合う。



そして花びらの舞う中、彼女が投げたブーケを友人が受け取った時…



空から何かが降って来て、バチバチと顔に当たった。



「何!?…これって…雹!?」



まるで幸せそうな二人に誰かが嫉妬しているような…そんな気がしてならなかった。