名前を呼ばれた。
それだけで驚いた。
理由は簡単。
初めて呼ばれたから。
今まで自分の存在を呼ばれていただけで、自分を呼ばれたことがなかったから。
この青年は初めて会ったばかり。なのにこんなにもイチを驚かせた。
しかも自分を信じさせた。
初めてがたくさんだった。
そんなアルトの瞳は揺るぎない精神が見えたし、何より人の心を奥底まで照らすようなあの笑顔があった。
まるで太陽のような輝き。
あの青年が太陽ならば、自分は月だなと嘲笑した。
すると背後から小さな寝息が聞こえてきた。
少しだけ顔をずらすと、アルトが安らかに寝ていた。
そうか、と納得した。
青年はイチに信じてくれと言った。それと同時にイチを信じていたのだ。
イチが小さく口元を上げた。
自分の思い込みだとしても、なぜか笑みがこぼれる。
笑ったのはいつぶりだろうか。
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