「…許せ。」
とっさとはいえ、強烈な手刀だったためイチは気を失ってしまった。青年はすまなさそうに目を伏せた。
「おや…?」
そんなイチの顔を見ると、瞳から一滴の雫がこぼれ落ちていた。それを青年−−アルトはそっと拭う。
彼女の身を抱えると、丁寧に自分のベッドへと降ろす。そして優しく頬を撫でた。
「辛い、んだろうな。」
そう呟くとベッドの横にあるソファーに寝転がった。
イチは夢を見ていた。
遠い昔の記憶。
感情を押さえ込んだのはこのことがあったからだ。
『あなたなんてどうせ、死ぬのよ。』
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