なぜか許せなかったのは
あの着信音と、焦った表情。
今までも電話が鳴ったことはよくある。
クラブのママさんや、女の子から誘いの電話がかかってきたことがあった。
夫は、いつも面倒臭そうに「まただよ」と言いながら、電話に出る。
電話に出ると夫は、優しい声で、また行くから、と言って電話を切った。
やましくないから、私の前で電話をしていたんだと思う。
今回はきっと本気。
彼女と一緒に着うたをダウンロードして、彼女専用の着信音に設定した。
夫は携帯電話には疎く、ダウンロードなんてできないから。
それも、私の思い違い?
実は、携帯電話を使って、出会い系サイトの女性と会っていたりもするのか…
激しくなる妄想が止まらなくて、私は熱いお湯を自分の顔にかけた。
そして、鏡に映る自分を見た。
田所さんが言ってくれた言葉。
こんな40過ぎの私を綺麗だと…。
肌が綺麗だ、フェロモンが出ていると…言ってくれた。
助けて。
助けてください、田所さん。
私はどうすればいい?

