眉間に寄せたしわがなんだか切なく見えた。
悲しいような
寂しいような
そんな顔をしていた。
彫りの深い顔。
高い鼻。
濃いひげ。
低い声は今日はもっと低い。
「真千子さんの幸せを見守りたい…そう思っているのに…奪いたいとも思ってしまう。」
田所さんは私が求めていたことを告げてくれた。
待っていた。
その言葉を…
奪って欲しかった。
奪って、連れ去って
ここから抜け出したかった。
田所さんを愛してる。
「奪ってください…」
震える私の声は
あなたに届きましたか?
ちょうどお客さんが入ってきたので
カランコロンという音で
私の声はあなたに届いていないかも知れない。

