私がぼーっと彼の話を聞いてる間にも、彼は、私をうまく誘導しながら、空いてる席に座らせてくれた。
途中で、ちゃんと二人分の飲み物まで取ってきてくれてる。
「コレでいい?」
と言って、彼はオレンジ色のカクテルを渡してくれた。
「えぇ。ありがと」
場馴れしてるな、なんて関心してたら、彼はグラスをかかげて、私の顔を覗き込んでる。
「俺、斉藤一樹。よろしくね」
「私は宮崎杏子。よろしくね、斉藤くん」
「一樹でいいよ、杏子さん。
はい、乾杯!」
って、一樹くんは人懐っこく笑った。
ちょっと強引だけど、ひとりぼっちの会場では、救いの神かも。
ノリは軽いけど、悪い子じゃなさそうだし、私は彼と一緒にいることにしたんだ。


