手に力が入らなかったせいで、あたしと夏目涼の間にボトリと音をたてて鞄が落下した。 泥水を吸っては更に色を更に変えた鞄を見つめる。 そのまま顔を上げて夏目涼を見ると、珍しくとても驚いたような表情をしていた。 そんな表情を見つめ思う。 あたし―――何に怖がった? 「ご…ごめん…」 ぽつりと落ちたのはあたしの謝罪の言葉。 あたし何をしたの? どうして彼の体温を〝怖い〟と思った? あたし――― 「ごめん…なさ…」 あたしは両手で頭を抱えた。