わたしは、いやらしい、熱のこもった布団から立ち上がり、窓を開けた。


すうっと、冷たい風が、ふきこんできた。

冷たさにまぎれた、春を呼ぶ沈丁花の清廉さ・・・・・・。



自分の髪から染み出してくる、あの、臭い。




昨日わたしは、いったっけ。

新しい口紅が、欲しいんだ、と。

自分から、いったんだっけ。

春色の口紅が欲しいんだって。




わたしから進んで、牢獄にはいったっけ。





あの口紅がなくても、春は風の中に。


光の中に。