「でもっ、魔法少女ってアレでしょ、あの、フリフリの衣装着て、なんかキラッキラの杖とか持って!」

「うん、まあ、そうだね」

「あたしには似合わないってば!」

 撫子の脳内には小さい頃見ていた魔法少女もののアニメがちらつく。

 ピンクのフリフリの服、かわいい技…

 撫子は、自分でもボーイッシュなほうだとわかっている。

 なんだか、やけに女子に騒がれるし。

 絶対に絶対に、魔法少女なんか似合うわけがない!


「いやいや、そうでもないよー?それに、魔法少女って体力いるしね」

「へ…そうなの?」

「うん。きみ、すっごく身体能力高いから、いいと思うんだ!」

 ごり押ししてくるソフトボール。

「うーん、でも…」

「ねえねえ、お願い!きみなら立派な魔法少女になれるって!」


 さらに、ソフトボールはとどめをさす。

「…お願い。魔法少女を見つけられなかったら、クビになっちゃうよお…」

 今にも泣き出しそうな声。

 心が痛い…!


「…わかったよ」

 撫子は折れた。

「え…っ!ほんと、いいの!?」

「うん。だけど、学校と部活の邪魔にならない範囲でね?」

「うんうん、大丈夫!じゃあ詳細はあとで書類持ってくるから!!わーい、仕事終わったあーっ!!」

 いきなり元気になるソフトボール。

 そのまま飛びさってしまう。

 撫子は騙されたような気分で立ち尽くしていた。