寒い季節とはいえ、今日は暖かく、裏庭には日が差して絶好の昼寝日和である。

 撫子は気持ちよく夢を見ていた。





「春野…撫子…」

 夢の中で、かすかに撫子を呼ぶ声がする。

(ん…?誰だろ)

 撫子は、疑問に思いながらも耳を傾けた。

「はるの、なでしこ、ね…変な名前だなあ!なでしこって秋の花じゃん!」

 …黙っていると、声は勝手なことをいい始めた。

「うーん、キャラ設定したやつの適当さが嘆かわしいね、まったく」

「ちょっとっ!?人が気にしてることをっ」

 そこまで言われては流石に大雑把な撫子も黙ってはいられない。

 どこにいるのかもわからない声の主に向かって叫んだ。


「わっ!?」

 なんだか慌てたような声とともに、ぽんっと音がした。

 撫子の目の前に現れたのは、ソフトボール大の光の玉。

「きみ…気付いてたの?」

 さっきからの声――幼い少年のような声が、そのソフトボールから響いてくる。

「気付いてたも何も、あたしが気持ちよく昼寝してるのに何、さっきから」

 だが、ソフトボールは撫子の文句に耳を貸さない。

(耳があるのかどうかはわからないが)

 ただ、撫子の周りをぐるぐると回っているだけだ。

 全身を眺め回されるような不快感に撫子は眉をひそめた。

(眺めているかどうかもわからないが)