「ちょっと待って下さいっ」

桜がちらほら咲きはじめた季節。

暖かくて、気持ちもウキウキとするようなこの季節。


アパートの管理人室に、あたし、松本杏里の声が響く。


高校が始業するまであと1週間。


父と母が借りてくれた部屋に来た。




…………それなのにッッ!!!



「なんで、部屋が満室なんですか!!??」


管理人のおじいちゃんに泣き寝入りをする。


「ごめんねぇ。何故か満室なんだよ。悪いけど、他を当たってくれるかい??」



「そ…そんなぁー……」


弱々しく頭を下げるおじいちゃんには何も言えない。



あたしは、おじいちゃんに頭を下げて管理人室を出た。



どこが、ウキウキダァーッ!!!!
最悪だよッッ!!!