子供の頃にも何度も聞いたことがある。

その度に知らないの一点張りで返されてまた考え込む、いつものパターンだ。

「歩美、ずっとそのアリンさんの事で悩んでいると、その内体を壊すからアリンさんの事は忘れなさい。」

「そうしたいのは山々なんだけどね。」

私の歯切れの悪い返答に母さんはまた話始めた。

「アリンさんの事を忘れるよう心がければ、そのうちまた普通になれるかも知れないでしょ。」

「そうかも知れないけど…」

「歩美は歩美でしょ。しっかりしなさい。」

母さんのそんな言葉に、私は小さく「うん」と頷いた。