「傘、お使い下さいませね。次に病院にいらっしゃる時に、また……」


「深山咲さん?」


和音の台詞は聞かず、友梨はふかふかの新雪の上を器用に小走りで逃げていってしまった。


「……」


和音は一瞬追いかけようとしたものの、昨夜と今朝の友梨の状態を思い出し、踏み出しかけた足を止める。

くるりと傘を回して一度雪を払い、友梨の好きな深緑色のアンティークな傘をさし直す。


その傘は和音の見覚えのない物で、7ヶ月という時間の重さを改めて感じ溜息をつく。




……オレと友梨に残された時間は。


一体あと、どれ位あるのだろう……