「…ごめんなさい…」

あたしは消えそうな声で言うと遥は優しく微笑んだ。

「なぜ謝るの?俺は美月に謝れる権利はないのに」

「…」

あたしは視線を剃らした。
もう乾ききった涙痕に風が触る。
人があまり通らないこの道。
両側には色を染め、散る、紅葉たち。
その景色が遥を一層引き立て、魅了する。

「…遥…」

「ん?」

あたしは腕を伸ばし、遥の細い身体に絡ませた。
固くて、だけで温かかった。

「…積極的なんですね」

「…違う、もん…っ。…ただ…」

あたしは喉まで来た声を止め、黙り込んだ。
もし、この言葉を言ってしまったら抑えていた感情が出て、遥に甘えてしまうかもしれない。

迷惑になるかもしれない。


「ただ?」


だけど。


「…ただ、こうやって遥を感じていたい…」


コントロールは難しい。


「っ…」


あたしは知らない。
この時、遥はあたしに見せたことのない顔をしたことに。
頬を赤らめ照れていたことに。


「…貴方は馬鹿ですか……?」


「…遥の傍に居られるなら、あたしは馬鹿でもいい…」


「…本当に人の気持ちもわからないとんでもないお馬鹿さんだ」


そう言うと遥はあたしを抱き寄せた。
力一杯、だけど包み込むように。

そして、あたしは顔を上げた。


「…大好き」


「知ってる」


遥は目を細め妖艶に笑うと自らあたしに口付けをした。
額ではなく、唇に。