あたしは縁側に腰を下ろし、あしをぶらつかせる。
何もしないままただじっと、空を見上げていた。


花恋と美波が来た。
二人はイケメン好きで、直ぐ様翔太くんを捕獲。
その後、翔太くんはそのまま花恋と美波のお話に付き合わされて、あたしには暇が出来た。

何をやろうか。
あたしはふと、空を見上げる。
雲ひとつない空が眩しい。
まだ、昼過ぎじゃないか、とあたしは考える。
だから何をするかなんて。
決まっている。

遥に逢いに行く。


あたしはその場に立ち上がり、三人に踵を返して歩き出す。
だが、花恋と美波は気付かない。
あたしは安堵をしてサンダルを履き、玄関の扉を開ける。
足は休む事なく、水城神社へと向かって行く。


遥に対する気持ちが“好意”を意味している事を自覚して、やけに意識してしまう自分がいた。

ご飯の時だって。
お風呂に入ってる時だって。
寝る前だって。
目が覚めた時だって。

常に思い浮かぶのは、遥の笑顔だった。

そしていつしか思い出す。

遥の唇があたしの唇にそっと下りたのを。

「……」

気が付けば顔が真っ赤になって。
自覚しなきゃ良かったって思ったりもする。
自覚してから遥に逢うのは初めてだから余計に緊張するのだ。
だけど引き返す余地もない。
だって今、あたしは。

「こんにちは。美月ちゃん」

「…こ…んにち…は…」

遥の目の前にいるのだから。
勿論、あたしの顔は真っ赤になっている。
そんなあたしを遥は鼻で笑い、距離を詰めてきた。
あたしは俯き、固く目を閉じた。

すると。

ちゅ。

耳元で何かが聞こえた。
いや、耳元に何かが触れて、そこから大きな音が聞こえたのだ。

ハッとし、正体を見ようと振り返ったら。

「はっ、遥!?」

「ん?」

遥はいつものニコニコ顔で、あたしを見詰めた。
あたしは耳元に来たアレの正体が分かると、顔を赤くする。

「…あふれほら…!!」

パニック状態になり、上手く言葉が出なくなって、口をパクパクさせる。

「かわい…」

ちゅ。

また、聞こえた。
今度は頬に。
あたしは絶叫して、遥にもたれかかった。