時間は速い。

あたしがこの町に来てから異様に時計の針は動く。
1日が終わることがこんなに名残惜しいなんて。

今までのあたしだったら全く思わなかったのだろう。


初めて付き合った彼、柿崎先輩。
剣道部に所属していて、ルックスはいいとされていた。
主将としての役割を果たし、立派な人だった。
あたしは付き合っていて何も不満を持たなかった。
だけど彼は不満があったのかな?
彼はあたしを玩具のように扱い、やりたいだけやってあたしの身体をボロボロにして捨てた。

そんなあたしを慰めるためか、雅也があたしに告白をしてきた。
次は信じられるかもって、思ってた。
同級生でムードメーカーで人気者で何より、あたしに好意を毎日のように伝えてくれた。
だけど。
突然のデートのお誘い。
デート中に掛かった一件の電話。
雅也の彼女からだった。
結局、あたしは雅也の暇潰しにされてたみたいで、本命は別にいた。
“浮気”という様だった。

その後、あたしは“男子恐怖症”とは言わないだろうが、男子に一切、関わりを持たなくなった。

だけど。

電車の中でたまたま会った大人の男に一目惚れ。
それから毎日毎日、電車で会い、あたしたちは連絡を取る仲となった。
その人は社会人で悠さんといい、カッコいい人だった。
だけど、カッコいいだけだった。
いきなり会社に来てって言われて行ってみたら、手首をネクタイで縛られて悠さんに好き勝手された。
あたしは怖くて悠さんとの縁を絶った。


それっきり、あたしは男嫌いになったのだが、遥に逢って変わった。

いや、遥だからだと思う。
遥にしか、そう思わない。



多分、これがきっと。







本当の“恋”なのだから。









「美月ちゃん」

隣の遥が、あたしを呼んだ。
あたしは応えるように、遥を見詰めた。
すると遥の顔は近くて。
あたしと遥の距離は唇によって縮まった。

「……考え中の顔も、可愛い…」

不意討ちの言葉にあたしの顔は噴火したように真っ赤になる。
遥は微笑み頭に手を載せる。
髪を撫でるその手が、あたしは大好き。


ううん、きっと遥自体が大好きなんだと思う。



自覚、してしまった。

あたしは遥に密かな好意を抱いている事に。