向かった先は、あたしの帰るべき場所、大久保家。
遥を先頭にして歩いて来たのにどうして遥は場所がわかったのだろう。

大久保家の門の前に立つと、遥はあたしに振り返った。

「さぁ、着きましたよ」

「…」

だけどあたしは動けなかった。

「美月ちゃん?」

「…遥って、凄いね」

「え…」

あたしは笑顔を見せて、遥の前に立った。
遥は何やら不思議そうな顔をした。

あまり、遥のことは探らないでおこう、そう思った。
今のこの関係を崩したくない、あたしは今の関係を維持したい、そんな気持ちがあたしを襲っている。

「送ってくれて、ありがとう」

あたしは力一杯の作り笑いを浮かべる。
遥はそんなあたしを悲しく見て、微笑んだ。

「ばいばい…」

あたしは遥に背を向け、門をくぐる。

翔太くんは、怒っているだろうか。
それだけがあたしは不安で不安で仕方がない。







「――――…」








後ろで遥の声が聞こえた。
あたしは叩かれたように振り返ると。

「…あ、れ?」

遥の姿は見当たらなかった。
あたしは門を出て、遥の姿を見つけるべく、キョロキョロする。

「遥…?遥!?」

だけどあたしの声は虚しく響くだけで。

「…っ」

さっき、遥は何を言ったのか、全く聞き取れなかった。
すると。

「…美月?」

反射的に振り返る先には、翔太くんの姿。
あたしはゴクリと喉を鳴らし、謝ろうとした時。

「…ごめん」

深く頭を下げ、謝罪の言葉を述べた。
あたしはただ、その現状についていけなく、オロオロする。


「あたしこそ、ごめんなさい!!」

そう言ってお互い頭を下げたあと、笑い合って、仲直りすることが出来た。

そしてその夜、夢をみたんだ。
遥とあたしの夢。

今日起こった出来事と全く同じ様な。
門の前で別れを告げ、遥に背を向けた。
その後に遥は呟く。


「…ずっと…笑顔で」


こう言ったんだ。
そのまま遥は、風と共に消えて行ったと。




そんな夢を―――。