踊り場に着き、あたしは踊り場に登ろうとするが、遥はあたしを引き留めた。

「なに?」

あたしは遥の方を向く。
遥は至って普通な表情であたしに言った。

「抱っこ、してもいいですか?」

「だ、抱っこ…?」

あたしがそう言うと遥は可愛く笑って「はい!」と言った。
あたしは仕方なく遥の方を向き、溜め息を吐いた。
そして両手を広げた。

「……美月ちゃん…?」

「なに?」

抱っこをねだる子供のようにあたしは遥に向かって両手を広げていると、遥は頬を赤く染め恥ずかしそうにしていた。

「抱っこでしょ?」

「そうですけど……、可愛すぎです」

「なっ!!」

そう言うとあたしの両脇に手を添えるとそのまま自分の方に持っていった。
あたしは遥の首に巻き付く。

「…重くないの?」

「全く」

そう言うとあたしは遥を上から抱き締めた。

「座らないのですか?」

「うん…」

踊り場に座らせようとした遥の行動を嫌がり、あたしは遥に抱っこされたまま。

「どうして、座らないの?」

「…くっついていたいから…」

我ながら恥ずかしい答えだ。
だけど、あたしはこれっぽっちも冗談を言ったつもりはない。
あたしの気持ちのまま。
だって、今日くらいだもん。

「…遥が消えちゃう前に、近くで遥を感じてたいんだもん…」

「……美月ちゃん…」

遥はあたしを踊り場に下ろした。
あたしのおしりには冷たい温度が触る。
遥の首から腕を解くと、遥はあたしの額に唇を落とした。

「…ごめんなさい、ありがとう…」

「……」

そんなに悲しい顔をしないで。
余計にあたしも悲しくなってきちゃうよ。
お願い。
笑って?

「…遥…」

あたしは遥の頬に手を当てて、そっと唇を重ねた。
そっと目を閉じると遥もゆっくりと目を閉じた。


どこにも行かないで。
ただあたしの隣にいて。
離さないで、あたしのこと。
もっと作りたいよ。
遥との、思い出を。
この先ずっと。
二人でずっと。

あたし、考えてた。
遥との将来を。

子供を作って。
楽しく毎日を送ったり。
朝も昼も夜も。
遥のことを考えたり。
愛を確かめ合ったり。
辛いことや悲しいことがあっても直ぐ相談するの。
嬉しいことがあったら二人で分け合って。
幸せを分かち合う。




……叶わないって、分かってても想像しちゃう。

それくらい、許してくれてもいいよね?



「…美月ちゃん」