痛い。
またあの時のように。
胸が握り潰される様。
苦しい。
海底に沈むような。
辛い。
会いたいのに会えないから。

「……美月…ちゃ…」

消えるような声が空気中に漂う。
それに虚しく答える、風に煽られた木々たち。
悔しいくらいに静かなこの神社にただ留まることしか出来ない自分に腹がたつ。

今頃、美月ちゃんは何をしているのだろうか。
君は俺の事を想ってくれてるの?

俺は頭をくしゃっと掻いた。

いつも、どんな時でも可愛い表情をする美月ちゃん。
そんな喜怒哀楽な彼女を見るのは俺の楽しみの一つだった。

だからだろうか。

いつしか俺は君に惹かれていた。
君も俺に惹かれていたのだろうか。

『……す…き…』

俺の腕の中で真っ赤な顔をしながら確かに言っていた美月ちゃん。
俺はたまらないくらい嬉しくて、だけどバレないように冷静を保っていた。
本当は今すぐに俺のモノにしたくて仕方がなかった。
……でも。


『ありがとう、バイバイ』


あの言葉は俺には抱えきれないほどの悲しみが襲ってきたんだ。

「バイバイ…なんて……」

そんなの絶対に嫌だ。
俺は嫌だ。
美月ちゃんがなんか言おうと俺は君に会いたくて仕方がないんだ。

君不足で君依存症なのだから。



今すぐ、会いたい。



「そうだ……」



夢の中で、会いに行こう。





俺は一人無表情で真っ赤な鳥居を眺めていた。
その向こうには泣きそうなくらい綺麗な空が映っていた。