デパートに着いてみると、デパートの外見はクリスマスのイルミネーションが輝いていた。
まだ24日のイヴでもないのに群がるカップル達。
近くのベンチや、歩道、デパートのお客さんまでカップル。

「こりゃ、すごいね」

お母さんだって呆れ気味。
あたしは羨ましく思うだけだった。

遥と、いつかは……なんて。
変な妄想が爆発してしまう。
あたしは我に返ろうとお母さんに呼び掛けた。

「よし、買うぞー!!」

「いや、バーゲンセールでも特売でもないから」

まんまとツッコミを入れられてしまった。





―――…





あたし達は別行動をする事になり、あたしには都合が良かった。
遥に買うものも普通に買えるから。

「よし、頑張るぞ!」

向かった先は財布売り場。
翔太くんには財布にしようと考えていた。
たが。

「…種類が豊富ですこと…」

暖色から寒色、派手な柄から無地の物までたくさんの種類があった。
値段もそこそこで良質なものばかり。

そして何よりこの店に来る客。
カップルばかりなのだ。
きっと一人で財布を見ているのはあたしだけだろう。
羞恥が襲う中、あたしは店内を回ることにした。

「うーん…」

どれにしようか迷う。
翔太くんが好きそうな柄と色。
良く、知らなかった。

翔太くんは爽やか?だからブルーかな。
それとも情熱的にレッドかな。
いやいやチャラ男っぽくショッキングピンクかな。





―――…



30分がたった。
未だに決まらない翔太くん宛の財布。
何色がいいのか、全くわからない。

あたしが項垂れていたところに一人の女性定員が話し掛けた。

「お迷いのようですが。誰宛でしょうか」

「あ…、えっと…」

「恋人でしたら、大人っぽいブラックはどうでしょう?」


定員さんが白い手袋をして、いかにも貴重品のように扱いながら持ってきたのは、黒い長財布だった。