優しい笑顔にあたしは息を飲んだ。
暗闇の世界からまるで光の世界に来たような、そんな感覚に。


「…会いたい、会いたいよ…」

「明日にでも、会いに行ってきなさい」


あたしは優しい達大さんの言葉に甘え、明日遥に会いに行く事を決意した。

きっと大丈夫。
遥はいる。
また、遥を感じられる。

気持ちが軽くなり、顔が綻んだ。



その時―――





「許さねぇぞ。そんな事」


「え…」

「…翔太」



あたしの目の前にに翔太くんは立ちはだかった。
翔太くんは不機嫌さ最上のようなくらい、恐ろしい顔をしていた。


「…翔太」


達大さんは立ち上がり、重たい口を開いた。


「…明日、美月ちゃんを遥くんのところに行かせてやれ」

「嫌だね」

「翔太…!!」

「ふざけんなよ!!!」


翔太くんの怒鳴り声が部屋中、いや、家中に響き渡り、あたしはただ黙ることしか出来なかった。
翔太くんはまた口を開き、続いた。


「父さんは知ってたんだろ!?俺が知る前から美月とあの男が会っていたり、愛し合ってた事を!!」

「ああ」

「なら…どうして…!!!」




少し間が空いた時。
達大さんは低い声で言った。





「言ったところでどうする」


「…!?」


「お前はきっと、美月ちゃんの本当の恋に災いをもたらすだけだ」



あたしが口出しするような環境じゃなかった。
あたしは翔太くんの顔色を伺い立ち上がった。


「あ―――」


「俺と美月は婚約者じゃねぇのかよ」


「っ…」



口を開いたあたしは静かに口を閉ざし、翔太くんの目を見た。
達大さんはただ翔太くんを見つめていた。



「美月の婚約者は俺だ。遥じゃないんだよ……!!!」


「…確かに、そうだ。だけど」


達大さんは翔太くんを睨んでいた。
あたしはただ息を飲み、硬直するだけ。


「婚約者は決めつけられた恋愛だ。自分の意志ではない」

「っ…」



あたしの胸は高鳴った。
二人のやり取りに不安がよぎって。
すると達大さんはあたしの方を向き微笑んだ。


「美月ちゃん、お風呂入ってきなさい」

「で、でも…」

「大丈夫」


あたしは頷き達大さんの部屋を後にした。