この秋はなかなか思い出深い季節だった。

秋なのに、春のような暖かさと華やかな花々が彩り、昆虫が楽しそうに飛び回る光景。

春に桜が咲き誇っていたはずの水城神社の木々。
だが今になってみると、紅い紅葉が繁り、風に飛ばされ散っている。



秋なのに、秋ではなく。
秋だけど、何かがおかしい。



こんなんだけれど、あたしの近くにはいつも遥がいて。

何かがおかしくても遥がいるだけで“当たり前”に感じて。


あたしの思い出には遥がいっぱいになっているんだ。



「なに、ニヤけちゃってんの」

「に、ニヤけてない!!」


こう思ってたって、遥にバレてしまうだよね。


「美月ちゃんてさ、……」

「ん?なに?」

「~~~っ……」

「??」


さっきまであたしを見て笑っていたのに、あたしから視線をそらし、片手で上手に顔を隠す。
だが、遥の細くて長くて白い指の隙間から見える頬と瞳。


「っ…」


初めてだったかもしれない。
遥の頬が、耳が。
真っ赤になっていた。

いつも遥にジラされてドキドキしているが、今はまた違ったドキドキ感があった。

遥を見ていて自分も恥ずかしいし、遥を見ることができなくて。

少し潤った瞳で遥を見上げれば、遥の熱を持った瞳と視線が絡まる。


「…は、る…」

「…ごめん、その…、なんか、俺…今ココがヤバイみたい…」


そう言って遥はあたしの片手を取り、自分の胸にあたしの手のひらをあてた。

すると。



ドックン、ドックン。
ドックン、ドックン。



「……ぁ…」


深く、奥底か外に向かって振動が響く遥の心臓。
まるでいつものあたしみたいに、いや、あたし以上に遥の鼓動は大きく、そして速さを変えることなく鳴り続けていた。


「俺…美月ちゃんの傍にいられて、本当に……嬉しい…」

「…え…?」


あたしの心臓が大きく跳ねた。


「…美月ちゃん、は…さ。俺と傍にいるの…嫌?」




遥の瞳は今にも泣きそうな程涙を溜めていた。





「あたしはっ…―――」






その時だった。

あたしと遥に嵐は起こったのだ。