やがて時は過ぎ、11月の半分を過ぎようとしていた。
あたしは水城神社で見たあの光の世界を誰にも言わず。
毎日、また行ってみたいなーなんて思ったりしている。
相変わらず遥とは毎日会い、言葉を交わし、遥に甘い言葉を囁かれ、顔を赤くしていた。
まるで恋人同士のように。
「美月ー?」
「はーい」
あたしはお母さんに呼ばれ玄関に向かう。
玄関にはスーツを着こなすあたしの両親と翔太くんの両親。
今日は朝から忙しかった。
大久保家が運営する会社が何やら歴史に残りそうな素晴らしい実績を残したらしくその会見を行うからだとか。
どうして会見なのだろうか。
しかもお母さんとお父さんが行っても意味ないのでは。
と、あたしは思うが両親と達大さんと夏希さんを快く送り出す。
「行ってらっしゃい」
そして玄関にあたしだけ残し、四人は扉の外へと消えた。
「さてと…」
あたしは進行方向を変え、自分の部屋へと歩き出した。
と、その時。
通り掛かった翔太くんの部屋から何やら大きな音がした。
ドスン。
バサバサバサ。
あたしは迷わず翔太くんの自室であるところの障子を勢いよく開けた。
「しょ、翔太くん!?」
そこには本に埋もれた翔太くんがいた。
「み、美月、助け…」
「わかった!!助ける!!」
あたしは翔太くんに被さる色々な本を一冊づつ取り、近くにある巨大な本棚に並べていく。
カバーの外れた本など丁寧に取り付け入れる向きを考えて並べる。
ふと、あたしは一冊の本に息を飲み、手を伸ばした。
それは…。
「…翔太くん…」
「何?」
「…変態…」
「あ、おい。それはっ…!!」
本の山からバサッと手を伸ばしあたしからその本を奪う。
それを抱き締め腕をクロスし大事そうに持つ。
腕の間から少し見えるオレンジ色の紙カバーをして中身がよく見えない本。
あたしは少し後ずさる。
「…翔太くん、最低」
「ち、違うって!」
「最低、言い訳無用、とにかく人間として最低。あり得ない。人間失格」
「~~~っ!!!」
あたしは腕を組み、翔太くんを軽蔑したような目で見下す。
それを悔しく見つめる翔太くん。
「はぁ。もう相手にしてらんないよ」
あたしは翔太くんに背を向け、障子に手を添えた、ら。
「待てよ」
「えっ…」
力強く腕を引かれあたしは翔太くんの胸に抱かれた。