あたしは赤くなった目を微かに開けた。

「…ん…?」

目を開けたら木に寄りかかり、座り込んでいた事を認識する。
隣には遥の姿。
遥は目を閉じ寝息を立てながら夢の中に意識を持っていっていた。
自分も寝ていたんだと気が付く。


「ふぁー…」

軽く伸びをして、あくびをする。
そしてあたしは色とりどりの花が咲き誇るこの景色を焼き付けようと、この場を立ち上がり探索した。


足元には花弁を大きく開き虫を誘う美しい花々。
踏まないように爪先で歩く。

光の筋が弾ける。
あたしが進むのを御供しているようにピカピカ輝く光。

「あなたたちは妖精?」

あたしは答えもしないはずの光に問い掛けてみた。
だが、光たちは嬉しそうにクルクル回る。

すると空から青い鳥が飛んできてあたしの肩にちょこんと止まる。
初めて見た青い鳥に目を輝かせるとあたしはまた歩く足を動かした。

空は澄みきった青。
雲がなく、繁る木々にぴったりの空だった。

でもどうしてこんなにも植物や昆虫、生き物が生き生きとしているのだろう。

あたしはふと意識を現実に戻し、考え込む。

秋なのにどうしてだろうか。

辺りを見渡しても枯れて落ち葉となり地面に落ちている木など一つもない。

あたしは一体、どこにいるのだろう。
あたしが見ているこの景色は夢なのだろうか。

あたしは遥に手を引かれこの場所に来た時の様子を思い出した。
だがわからない。
気が付けばここにいたと言うのが事実。
見回しても水城神社に繋がる道など一つもないのだ。


あたしは振り返り寝ている遥を見つめた。

どうして遥はこんな場所を知っているのか。


「…遥は一体……」



あたしは木に凭れ掛かり寝息を立て着流しを身に纏い、かなりの美貌を持った不思議な青年をただただ見つめる事しか出来なかった。