ぎゅっと力強く、熱く抱き締めた遥。
遥の温もりと微かな吐息と柔らかい漆黒の髪がくすぐったい。
遥はあたしの肩に顔を埋めたまま、動かない。

そしてまた光の世界へと視線を運ぶ。


桃色、橙色、黄色、赤、青、それから紫の花々が咲き誇る。
蝶、てんとう虫、蜂がちらほら飛ぶ。
まれに光の筋が線を引き弾ける。
妖精かな?と一瞬思うが、メルヘンにも程があると考えるのを制する。

それにしても変わった所だ。
この季節、秋にも関わらず緑の葉を繁らせ、花は満開に、虫は活発に動き、温かい光が身体を包むのだ。

あたしは夢を見ているのだろうかと思う、今起きている出来事が―――遥と巡り会えた事が全て。

「っ」

するとあたしは身近に感じていた温もりに気付く。
遥という温かい光に。
あたしは遥の背中に腕を回し、しがみつくように抱き着いた。


遥がバサッと頭を上げ、少し乱れた髪を風に靡かせながらあたしを色っぽい目で見つめた。

「…目、…閉じて」

「…?」

あたしは言われた通りに目を閉じる。
それと同時に、塞がれる未熟な唇。
すぐ離れ、互いを見つめ、また重なる。


光の筋は生き物のようにあたしたちを囲み、ぐるぐると回る。
まるで幻想的だ。


「…はっ…ぁふ…」

遥は優しく、激しくあたしの唇をあしらう。
あたしは徐々に赤くなる頬を感じるが、遥を感じるのに精一杯。

やっと止まった遥の動き。
あたしは倒れるように遥に身を重ねる。
そして温かい遥の身体があたしを包み、離さない。
やがて、あたしと遥はその場に座り込むが、体制を崩さずあたしは遥の胸に顔を埋める。


「…あたし…疲れた…っ」

吐息混じりに遥の胸でそう訴える。
遥はあたしの耳元で甘く、優しく悪魔の囁きをした。

「…こんなので疲れては、これ以上の事が出来ないじゃないですか」

「っ!!??」

あたしの体温は急上昇。
そして心拍数はかなり多くなる。


「…君をもっと、色んな方法で感じてみたい…」

「はっ遥!!!」

「なんですか?」

「い、いい今のは…っ!!」


遥はニヤリと笑い、あたしの耳元で小さく囁く。



「…美月を乱す―――…しかないでしょう?」



あたしの心と身体がビクンっと跳ね上がり緊張が走ったが、それと隣り合わせで恥ずかしさと嬉しさがあたしを巡った。