【音子side】

 よりを戻した私と慧は以前と変わらず…

「おいっ、帰りの支度に何分かかってんだよ!?」
「べ、別に良いじゃない…」
「あ?」
「うっ…ごめんなさい」

 仲が良いのか…悪いのか…。
 ただ慧の俺様は未だに…。

「相変わらずだね、お二人さん」
「ほーんとウザったいぐらいにね」

 振り返ると…光輝君と乃亜ちゃんだった。

「ねぇ! これから光輝とカラオケ行くんだけど2人も来ない?」

 と乃亜ちゃんがウキウキオーラで聞いてきた。
 えーっと、なんと! 光輝君と乃亜ちゃんは付き合っているのです!

「えー、乃亜、俺と2人じゃ不満な訳…?」
「そんな事ないよ、ダーリン♪ 後で2人の前でイチャイチャして見せつけてあげようよぉ」

 あはは…もうだいぶ見せつけられてるけどね…。

「んで、行くよな2人とも」
「んー、お邪魔じゃなければ…」

 と私が話していたら遮って慧が発した。

「俺、無理」

 と言って私の腕を掴み歩き出した。

「おっ、何だよー、デートかよ」
「ラブラブ過ぎてウザいわー」

 次々と毒を吐く光輝君と乃亜ちゃんの顔は笑っていた。

「ちょっと…どこ行くの!?」
「あ? 黙ってついてくれば良いんだよ」

 何よ…。教えてくれたっていいじゃんか。

 しばらく無言で慧に手を引っ張られて歩いてきた。

 目の前には公園の看板があった。
 公園行くんだったら隠す必要ないじゃんかー。

「何で公園来たの?」

 私の問いかけには慧は答えてくれなかった。

 公園にある丘を登って行くとそこには…綺麗なオレンジの光を放った大きな夕日が見えた。

「うわぁ~…キレイ…」

 私は思わず柵の方までは走り出していた。

「…音子」

 しばらくしてから慧が私を呼んだ。

「ん?」

 慧が少しずつ私に歩み寄った。

「散々傷付けたし、散々泣かせた。それでもお前は俺の事待っててくれた。これから先、もっと辛い事があるかもしれねぇ。それでもお前は俺と一緒にいてくれるか…?」
「…慧」

 これって…もしかして…。

「いや…俺のそばにずっといろ」

 思わず笑みがこぼれる。その言葉に私は拒否権なんて無いよね?

「…はい」
「分かってんじゃねぇか」

 と慧も得意げに笑った。
 そして慧はポケットから小さな箱を出した。
 それは…夕日の光でより輝いてる指輪だった。

「慧!? これ…」
「結婚指輪…までいけねぇけど…俺のって言う印」

 慧は私の左手の薬指に指輪をそっとはめてくれた。

「音子を幸せにする。約束する」

 そんなのズルイよ…。不意打ち過ぎる。これじゃ涙止まんないじゃん。

「返事は?」

 そう言って私の涙でぐしゃぐしゃな顔を持ち上げた。

「…これも拒否権無いでしょ?」

 こんな事言っときながら拒否するつもりなんて更々ない。

「ふっ。当たり前」
「ふふ。必ず幸せにして…慧」
「俺を誰だと思ってんだよ」
「そうだったね」

 そしてどちらかもなく深い深いキスをした。

 きっとこれから先、何があるか分からない。
 それでもついて行きたい、この俺様に…。