あれから一週間。

私は気まずい。

かなり気まずいのに…


「おまえ太った?」

「太ってません!!」

どうして遼ちゃんは相変わらずなの!?


なんか一人で落ち込んでるのも馬鹿らしく思えてきた。




部活帰りに麻衣子たちとCDを買いに行く約束をして玄関で待ってるのになかなか来ない。


どうしたんだろう。

私は上履きに履き替えてもう一度音楽室に向かった。


歩いてる途中、叫び声が聞こえてきた。

「馬鹿にしてんのか!?」

「いえ、してません」

「信汰クンの方が上手いんだもん。しょうがないでしょ」


激しい斎藤先輩の声と、それとは逆に冷ややかな信汰の声。

種田先輩が斎藤先輩の怒りにさらに火をつけていた。


「おまえ、部活に恋愛しに来てんのか?」

斎藤先輩が種田先輩を睨みつけながら言った。

種田先輩が顔を赤くして何も言わなくなると、今度は信汰を睨みつける。

睨まれた信汰は冷静な表情で、真っ直ぐ斎藤先輩を見て言った。


「俺、女に興味ありませんから」



信汰の言葉が、斎藤先輩の怒鳴り声より胸に突き刺さった。


音楽室にいるすべての人が同じように感じたらしい。

一気に音楽室の空気が硬くなった。


「ど…どういうこと?」

種田先輩の顔が見る見る青くなる。


みんなの視線が信汰を突き刺す。



信汰は何も答えずに頭を下げてその場を去った。