春。


桜がまだ咲ききらない中、入学式を迎えた。



歩くと軋む古びた校舎。


新しい紺色の制服。



やっと肩まで伸びた髪に何度も櫛を入れ、


心が桜色に染まる。




「ねぇ、本当にブラバンに入るの?」


「うん。もう入部届け出したよ」


「え~~~~!」




何故か麻衣子は私がブラバンに入ることを拒んでる。


はっきりとは言わないけど、それがすごく伝わってくる。



音楽室に続く長い廊下を歩いている間、麻衣子が何か言いたそうな顔をしてた。


気になって聞こうとしたとき、

「よっ、お二人さん!部活初日から遅刻しちゃうよ!」


信汰が来て、勢いよく背中を押しながら走りだした。



私たちはそのまま音楽室に入り、麻衣子には聞けなかった。