「おまえ、緊張してるだろ」

「う、うん。かなり…」


そりゃ緊張しまくりだよ!!

人前で何かをするなんて初めてだし、
ましてや憧れてた演奏をステージで出来るんだから。



「ひでぇ顔」

遼ちゃんは、私のひきつった顔を指差し笑いだした。



はぁ!?

こんな時になにを突然言ってくれちゃってるの!?

がんばってるのに!!



「ひどい!」
「ひどい!」


私の真似をして脹れた顔で同じことを言う遼ちゃん。


隣で見ていた東先輩と太田先輩が笑いだした。


「も~!」
「も~!」

小さく足をばたつかせる私は‥

笑ってた。


そして、知らないうちに肩の力が抜けていることに気がついた。





「大丈夫。楽しもう」


遼ちゃんはそう言って私からトランペットを取り、チューニング管を触って私に戻した。



帰ってきたトランペットのチューニング管は、

いつもどおりになってた。




私しか知らないはずの


『いつもどおり』



遼ちゃんは知ってたんだね。