「葵ちゃん、大丈夫…?」


柏木先輩が心配して私に声をかけた。



「この曲…私にとって特別な曲なんです。
私、中学生の時にここで柏木先輩が演奏したこの曲を聴いて、ブラバンに入ることを決めたんです」


「俺の演奏…?」


「こんな言い方変かもしれませんが、

私…あの時の音色に恋したんです」




私の言葉に柏木先輩の顔が固まった。



今の言い方そんなに変だったかな…。

けど、他に表す言葉が見つからなかった。



柏木先輩は空の姿に目を向けた後、真っ直ぐ私の目を見て言った。




「あの時の演奏、俺じゃなくて遼だよ…」




柏木先輩の言葉と空の音色が重なって私の胸の中に入った。