10年間、私は空を育てることに懸命だった。

悲しみに潰されそうになると、空の顔を見て前を向いた。





遼ちゃんがいなくなった頃の私は、空が眠るといつも泣いていた。


泣いて泣いて、泣き叫びたい声を押し殺して…。



遼ちゃんを思い出すだけで涙が溢れていたのに、




いつしか涙は枯れてしまった…。








遼ちゃんのことを愛しているのに、深い悲しみから救われていく自分。




毎日泣いていた私は

悲しみのどん底にいることが、遼ちゃんを愛し続けていることだと思うようになっていた。



涙が、愛の証だと思っていた…。






涙が枯れた私は、遼ちゃんを思い出すことが怖くなった。



遼ちゃんがいなくなったとき、



あんなに悲しかったのに‥


あんなに苦しかったのに…





私は、



遼ちゃんを


愛している人を思い出すことが




何よりも怖くなっていた…。