車道を走っていたトラックが、歩道を歩いている私達をめがけて走って来た。





遼ちゃんが私を突き飛ばし、車道に倒れ込んだ私が目にしたのは



真っ赤な血で染まった遼ちゃんだった。





トラックの下で動かない遼ちゃんに駆け寄ると急激な痛みがお腹に走り、

血に染まっているのは遼ちゃんだけじゃないことに気がついた。




私達はすぐに病院に運ばれたけど、

その時のことはあまり覚えていない。



ただ、遼ちゃんとお腹の赤ちゃんのことだけを思っていた。




遼ちゃんを失ったら私は生きていけない…


そう思っていた。






私はすぐに手術を受け、帝王切開で赤ちゃんが産まれた。



まだ2000gにも満たない小さな赤ちゃんの産声…


その声は、まるで空にまで届くような元気な声に聴こえた。









遼ちゃんは…?


遼ちゃんにも聴こえてるかな……





手術室を出た私は、看護婦さんに遼ちゃんがどこにいるのかを聞いた。



看護婦さんは、困った表情で医師に話しかけに行き、


その若い医師が私の所に来て言った。





『小川遼さんは、先程‥お亡くなりになりました…』