校舎を出ると、まだ雪が残っているのに春風の香りがした。


晴れた空の下、

遼ちゃんと手を繋いで歩く道。


歩きなれたこの道が、特別綺麗に見えた。




「今日は姉ちゃんの卒業祝いするの?」


「うん。たぶん家のカラオケでお父さんがさぶちゃん歌うと思う」


「ははっ、楽しそう。俺もまぜてもらおうかな」


「やめた方がいいよ、お父さん喜んで朝まで歌っちゃうから」





遼ちゃんと話してると、前から小さな男の子が走って来た。


「遼兄ちゃん!」



男の子は雪につまづいても、すぐに笑顔になって遼ちゃんの腕の中へ飛び込んだ。


「遼兄ちゃん、おめでとう!」


「ありがとー。悟、一人で来たのか?」


「ううん。ママも一緒だよ、ほらっ!」



悟君が指さす方に、綺麗で細身の女の人がこっちに向かって歩いていた。




あの人が、遼ちゃんのお母さん…


遼ちゃんが畳職人になることを、喜んで賛成してくれたお母さん。



優しく遼ちゃんに微笑みかけているお母さんは、とても優しそうな人だった。