資料室での出来事の後、

神崎先生は『一身上の都合』ということで桜丘高校を去った。



学校中のほとんどの男子ががっかりしてたけど、

神崎先生の後に入った山吹先生がすごくかわいくて、あっという間に神崎先生の名前を口にする人はいなくなった。



遼ちゃんと私は、誰からも干渉されることなく、時間があれば一緒にいるようになった。


卒業式が近づくと、一緒にいる時間がさらに増えた。




「今日の帰り、待ってるから一緒に帰ろう?」


「うん。ちょっと遅くなるけどいい?」


「サブローが元気ないんだろ?俺、あいつに会いたいから」


「わかった。じゃあ部活が終わったら遼ちゃんの教室に行くね」



日に日に弱っていくサブローのことを遼ちゃんに話したら、遼ちゃんはすごく心配してくれていた。








遼ちゃんと別れ教室に入ると、落ち込んでる麻衣子がいた。


「麻衣子、どうしたの?」


「葵~、私やっぱり斎藤先輩にチョコ渡せば良かった~~!」



バレンタインの日、麻衣子は部活の後にチョコを渡そうと決めていたのに、斎藤先輩は腹痛で早退してしまった。


麻衣子はそのことを斎藤先輩が帰ってから知り、結局チョコを渡せないままだったんだ。



「今からでも遅くないよ。渡しに行こう?」

「遅いよ…。チョコ無くなっちゃったもん」

「え…?」

「信汰が食べたの」


私達が話してると、信汰が教室に入って来た。


「おはよう!」


笑顔の信汰がこっちに来た。


「信汰、麻衣子が作ったチョコ食べたの?」

「あ…うん…」


気まずい顔になった信汰が言った。

「チョコが無くなったら麻衣子の悩みが消えると思って…。
ははっ…そんなことなかった…?みたいだね」


「「信汰のバカ!!」」



麻衣子と私は、信汰の背中をバシッと叩いた。



信汰は手を合わせて何度も謝ってた。


麻衣子が信汰に今日の帰りにお好み焼きをおごると約束をさせ、二人は仲直りした。



怒ってたはずの麻衣子が笑ってて、なんだか可笑しかった。