久しぶりの遼ちゃんの隣は居心地が良くて

しばらく二人で寄り添ってた。



「さっき言ってた和弘って‥誰…?」


「合宿で葵に声をかけた奴だよ。あいつ、俺と中学時代にけっこう悪さをしてて、それを知った神崎先生が、親の力を利用してあいつを脅し動かしてたんだ。

和弘、昨日のことも二年前のことも後悔してて、今朝うちに来たんだ…」



あの聞き覚えのあった声は、赤いTシャツの男の人だったんだ…。



あの時、『こいつはやばい』って言ってたのは


神崎先生が好きな遼ちゃんだったからなんだね。




頭の中で絡まっていた糸が解けたようだった。





「ごめんな…怖い思いさせて」


「ううん、いいの…。こうして遼ちゃんと一緒にいられるんだから…」



遼ちゃんがギュッと抱きしめてくれた。



「あのさ、葵…そろそろいいかな?」


「え、何?」


「そのチョコ。俺すごい食べたいんだけど」


「あっ忘れてた!」



すっかり渡すのを忘れてたチョコを遼ちゃんに渡した。



たくさんの想いを込めて…。






「すげーおいしい!!
このちょっと苦いのが俺好み!」


遼ちゃんはすごく嬉しそうに食べてくれる。



嬉しかった。


お姉ちゃんが教えてくれたおかげだよ。

ありがとう、お姉ちゃん。




「これからもバレンタインにはこれ作ってね」

最後のトリュフを口に入れた遼ちゃんが言った。



「材料が足りなくて味見しなかったから、同じのは無理かも」


「じゃあ…味見する?」



遼ちゃんの眼差しにドキッとした。