なっなに!?

遼ちゃんの唇が、息がかかるくらい耳元に近づいた。


「おまえ、なんでトランペットしようと思ったの?」



え‥?

意外と真面目な質問で拍子抜けする。


「去年の定期演奏会で、柏木先輩のソロを聴いたの。私もあんな音色で演奏したいって思ったから‥。
それが今の私の夢なんだ…」


この質問だけは堂々と答えられる。


だって、私の憧れ、夢だもん。




遼ちゃんは、私に耳を向けたまま軽く2回頷いた。



「どうしてそんなこと聞くの?」


「おまえ、小さい頃音痴だったから」


「ひっど~い!」



なによ~!

赤い顔をしてる自分が悔しい。



遼ちゃんの肩を思いきり叩いた。


遼ちゃんは笑いながら私の手を防御する。







遼ちゃん


私、嬉しかったよ。




小さい頃のことを口にしてくれて。


私のこと、覚えててくれて。






遼ちゃん



どうしてあの日、離れてしまったの?