「嶌田、今日一緒に帰らない?」


「はい!一緒に帰ります!」


赤い顔で慌ててフルートをケースにしまう麻衣子。


フォークダンスを一緒に踊ってから、麻衣子と斎藤先輩は急接近した。



きっと、どちらかが告白をしたら付き合い始めると思うんだけど、

麻衣子は「緊張してそんなことできない」って言ってる。



斎藤先輩は意外と奥手っぽくて、一緒に帰ることはあっても、告白する気配はないらしい。



そんな二人が初々しくて可愛く思えた。





「今日こそ告白しちゃえ」

信汰が言った。


「バカ!先輩に聞こえちゃうでしょ!!」

斎藤先輩には見せない顔で信汰の頭を麻衣子が叩いた。


「イタッ!葵も言ってやれよ」


「私は麻衣子が告白したくなった時に告白したらいいと思うよ」



麻衣子は、ほらねっていう視線を信汰に送り、斎藤先輩が待つ教室へ向かった。



「麻衣子、嬉しそうだね」


「だね。…葵は大丈夫?」


「私?私は大丈夫だよ」




笑って答えた。




私は平気だよ。

平気…。


そう自分に言いきかせていた。