「お願い…今の話聞かなかったことにして」


ごみを捨てた後、校舎の裏で私は信汰に頼んだ。



「このままでいいのか?」


「私…直接遼ちゃんに聞いてみる。きっと何かの間違いだと思うから」


「葵…」


「平気平気!だからほら、みんな待ってるよ、行って行って!」




重い足取りで歩く信汰の後ろ姿が見えなくなると、

涙が溢れそうになった。




大丈夫‥大丈夫だよ…。


遼ちゃんと話したら、きっとこの不安は消える。


遼ちゃんの笑った顔を見たら、あっという間に元気になるよ…。




溢れそうな涙をぐっと堪えて校舎へ歩きだした。





校舎に入ると職員室から出てきた神崎先生の姿が見えた。




「神崎先生…」




声をかけてしまった。




遼ちゃんと話すつもりだったのに、目の前に現れた神崎先生を呼び止めてしまった。



「神崎先生、今ちょっとお話しできますか?」








これから受ける衝撃をまだ知らない私は、


遼ちゃんを想う強い気持ちを胸に、神崎先生と誰もいない理科室に入った。