三年生が受験勉強をしている中、

遼ちゃんは毎日学校帰りにおじいちゃんの家に通って畳の造り方を教わるようになった。



教わるといってもまだ機械には触らせてもらえず、畳を運んだり造るところを見ているだけ。


『畳造りに手を触れるのは高校を卒業してからだ』

っておじいちゃんに言われたんだったて。



それでも遼ちゃんの目は、日に日に輝きを増していた。



私はそんな遼ちゃんを見てるのが好きだった。





ブラスバンド部は、十月にある学校祭に向けての合奏練習を始めた。


やっと慣れ始めた先生と一・二年生での合奏練習に少しずつ活気が戻り、

また楽しい時間がはじまり始めた。



「よ~し、今日の練習はこれで終わり!」

林先生が音楽室から出ると、個人練習をもう一度始めた人や楽器を片付ける音で音楽室がにぎやかになった。


私も太田先輩の隣で合奏練習で上手くいかなかったメロディーを練習。



学校祭で三年生が抜けた後の私達の演奏を初めて聞く三年生に、少しでも上達したところを見てもらいたいんだ。




練習を始めてしばらくすると、信汰がニコニコしながら音楽室に顔をだした。


「葵、ちょっと‥」


入ってくればいいのに、手招きしてわざわざ呼び出すなんて何?

信汰の笑みに疑問を抱きながら音楽室を出た。


「何?まだ練習したいんだけど…」



音楽室の扉を閉じながら言った私の後ろに立っていたのは、

信汰ではなく遼ちゃんだった。