家のすぐ裏ににある小さな工場。

そこからガシャンガシャンという今まで聞いたことのない機械の音が聞こえてきた。


茶色い木の冊子で囲われた大きなガラスの扉の向こうに、

少し汚れた白いシャツを着たおじいちゃんの背中が見えた。


大きな畳を抱えて機械を動かすおじいちゃんは、細身なのに力強くて逞しく見えた。



遼ちゃんは扉の前で立ち止まり、おじいちゃんの姿を遠い眼差しで見ている。



きっと、幼い頃に見た同じ光景を思い出してるんだね。


私は遼ちゃんの隣で、昔のおじいちゃんの姿を想像した。




「葵、俺さ…小さい頃に見たおじいちゃんの畳を造る姿をずっと覚えてたんだ。
たまに遊びに来るといつも畳を造ってるおじいちゃんが、すごくかっこよく見えた。
今も‥その気持ちは変わってないんだ」


自分の気持ちを確信したかのように強い眼差しで、遼ちゃんはおじいちゃんを見ていた。


「私もおじいちゃんかっこいいと思う」


私の言葉を聞いて、遼ちゃんは笑顔で言った。



「俺、畳職人になりたい」




初めて聞いた遼ちゃんの夢。



だから新しくできた私の夢を遼ちゃんに言ったんだ。




「遼ちゃんの造った畳で寝転びたい!」





遼ちゃんはとびっきりの笑顔を私に向けてくれた。



遼ちゃんの夢と

私の夢、


叶う日のことを想像しちゃった。



遼ちゃんの造った畳の上で

日向ぼっこをしながら寝ころぶ

遼ちゃんと私。