どのくらい時が経っていたんだろう…

目を開くと、私に微笑みかける遼ちゃんがいた。



「遼ちゃん…?」


私の手を握り、お墓に目を向けた遼ちゃんが言った。


「ずっと苦しかった。母さんの存在が、母さんが死んでしまったことが…。
だけど、俺もう逃げないよ。母さんのこと、今でも好きだよ。そう気づかせてくれたのは、葵だったんだ」


優しい眼差しでお墓を見る遼ちゃんの目には、まるでお母さんが映っているかのようだった。


「葵、ありがとう。やっと母さんに会いに来れたよ」



よかった…。

遼ちゃんの笑顔を見て、心の底からそう思った。



遼ちゃんと私は、しばらくお墓の前で遼ちゃんのお母さんの話をした。


お母さんの話をする遼ちゃんの顔は、最初に聞いた時の顔とは全く違っていた。


『おかあさん』の話をしている顔だった。






「遼君?」


遠くから小さな声が聞こえてきた。


振り返った遼ちゃんは、小さな体で白髪頭のおばあちゃんを見て呟いた。



「おばあちゃん…」


「やっぱり遼君なんだね?こんなに大きくなって…」



おばあちゃんのしわしわの手が力いっぱい遼ちゃんの背中を抱きしめる。



「ごめんね‥おばあちゃん…今まで会いに‥来なくて…」


「いいんだよ…こうやって会いに来てくれたんだから…」




遼ちゃんとおばあちゃんの目からは、たくさんの涙が零れ落ちていた。



私は二人の姿を見て、涙が止まらなかった。