授業中、どんな時計が遼ちゃんに似合うかずっと想像していた。


黒革の腕時計がいいかなぁ?

遼ちゃんが好きな青色もいいな…。



透き通るような青い空を見ると、いつも遼ちゃんが浮かんでくる。


遼ちゃんが好きな空の色。


私も大好きな空の色。


どこまでも続く、青い空の色。





昼休みに購売に行くと、いつも人気のパン屋さんに長い列が並んでいた。

私は麻衣子とその隣のお弁当屋さんで日替わり弁当を買った。


「神崎先生、ここに並びなよ」

「え?いいわよ、みんなも並んでるんだから後ろに行くわ」

「先生、私と一緒に並ぼう!」


あっという間に人気者になった神崎先生が、私の横を通り過ぎようとした時に私に気づいた。


「あなた、遼の‥小川君の彼女よね?」

「は‥はい、北島です」


なんでこんなに心臓がどきどきしてるんだろう。

ただの先生なのに…。


「明日の授業よろしくね」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


優しく微笑んだ神崎先生の顔を見ると、今朝のトラのようなオーラが嘘のように思えた。


もしかしたら、本当に良い人なのかもしれない。


みんなからこんなに慕われてるし、

第一印象で人を判断しちゃいけないよね…。



列の最後尾に並んだ神崎先生から、今まで嗅いだ事のない香水のいい匂いがした。