香織さんは猫のような綺麗な瞳とスッと高い鼻をしていて、

化粧をしなくても一目で綺麗な人だとわかる整った顔をしていた。


そして、黒くて長い髪が肌の白さを際立たせている。



私に無いものをいっぱい持っている人だった。



「私ね、今日から産休に入った山口先生の代わりに臨時職員として数学を教えるの」


嬉しそうに話す香織さんの目は、遼ちゃんに恋をしている目だと感じた。



遼ちゃん、その目を見ないで…。



遼ちゃんの指先をぎゅっと握ると、遼ちゃんが私を紹介してくれた。


「神崎先生、俺の彼女です。山口先生の代わりってことは、葵のクラスを受け持つんだよな?」


「うん…」


「遼に先生だなんて言われるとなんか鳥肌立っちゃうな‥」



笑って言った香織さん‥神崎先生の目は怖かった。

まるで獲物を捕らえようと牙をむいたトラのようだった。



「じゃ、俺達遅刻しちゃうから行きますね」


遼ちゃんは、指先を掴んでいた私の手を固く握りなおして、神崎先生に背を向けた。