校門が近づくにつれ、私はいくつもの視線に気づいた。


知らない人たちが遼ちゃんと私を見てる。

それもみんな女の人。


こそこそと耳打ちするように話している声が時々耳に入る。


「小川先輩、彼女できたの?」

「え~、ショック~~!」

「まさか、だってあの子だよ?」


聞きたくないのに耳に入ってくる言葉が、チクチクと胸にトゲを刺した。


だけど、大きなトゲが刺さることで、この小さなトゲ達の痛みは感じなくなったんだ。




「遼!!」


綺麗な声が後ろから響いて聞こえた。


「遼、久し振りね。会いたかったー!」


「香織…なんでここに!?」



遼ちゃんが、女の人を名前で呼んだ…。


驚く遼ちゃんの目…

その目には香織という女の人しか映っていなかった。


さりげなく遼ちゃんの手に触れた香織さんも、遼ちゃんしか見えていないようだった。



ついさっきまでの幸せな時間が、遼ちゃんと香織さんのものになってしまったように思えて…


私の胸は壊れそうにだった。