重たい気持ちを遼ちゃんに知られたくなくて明るくふるまった。


「中学校の卒業アルバム見る?遼ちゃんの知ってる先生とか載ってるよ。ね?ほら…」


開いて見せたアルバムには、懐かしい先生や友達がいっぱい写っていた。


「懐かしいね、ついこの前まで通ってた学校なのに」

「葵、俺の話し聞いてくれる?」


遼ちゃんはアルバムではなく、わたしの顔をまっすぐ見ていた。


そう…遼ちゃんに心の中を隠せるわけないんだ。

いつだって私のことをわかってしまう遼ちゃんだもん。


私はアルバムを閉じて小さく頷いた。



「俺の父さん、五年前に再婚したんだ。最初に会わされた時はびっくりしたよ。若くて綺麗な人だったから」


優しく微笑んで話す遼ちゃんから、その人は素敵な人なんだろうなって思った。


「父さんのどこがいいの?って聞いたら、答えられなくて本気で頭を抱えて悩んだんだ。そして『全部かな‥』って答えて、この人となら父さん幸せになるかもって思った。
今では3歳になる弟ができて、賑やかな家族になったよ」


「そうだったんだ…、私なにも知らなくてさっきはちょっとびっくりしちゃった」


「ごめん、もっと早くに言えばよかったよな」


「ううん、いいの。遼ちゃんのこと、これから少しずつ知っていくから」



微笑んだ私に向って遼ちゃんが言ったんだ。


「キスしてもいい?」



遼ちゃん??

面と向って言われると素直になれないよ。


赤くなった顔を隠すように下を向いて言った。

「だめ」


遼ちゃんはそうきたかっていう風に口元に笑みを浮かべて言った。

「葵、キスしたくないの?」


いじわる~~!!

キスしたくないわけないでしょ!

遼ちゃんは私が素直になれないってわかってて言ってるんだ!

こうなったら意地でもキスしないんだから!!