「葵?」

心配そうな顔で私を見る遼ちゃんに笑顔を向けた。


「ん、何?私の部屋に行く?」

「いや、そうじゃなくて…」


遼ちゃんに心の中を悟られたくなくて、すぐに部屋へ向かった。



ショックだった。

遼ちゃんの家族のことを知らない自分。

知ってるつもりになってた遼ちゃんの家庭の事情。


胸の中にぽっかりと穴が空いたようだった。



まだまだ知らないことがたくさんあるんだ。


一緒にいた幼い日々の中にも、

離れていた時間の中にも、

今の遼ちゃんにも…。



もっと遼ちゃんのことが知りたい。


遼ちゃんを知って、もっと遼ちゃんのことを好きになりたい。




好きっていう気持ちと比例してショックと焦りが湧いてくる。


どうしてだろう…。

初めは好きでいるだけでよかったのに、遼ちゃんの全てが知りたくなっちゃう。

私、どんどん欲張りになっていくよ。

こんな私、遼ちゃんは重たく感じるよね?


私だったら、きっと重たいって思っちゃうかな…

だけど、やっぱり好きな人のことはどんなことでも知りたいって思っちゃうんだ。