「桜丘高校、金賞」




告げられると同時に安堵の声が溜め息のようにいくつも聞こえた。


金賞・・・金賞だ!!



遼ちゃんの顔を見ると、かわいいくらい無邪気な顔で私に笑いかけてくれてる。

つい遼ちゃんの手を握っちゃった私を、遼ちゃんは力いっぱい抱きしめてくれた。


嬉しくて泣きそうになる。


嶌田部長、みんなの演奏が金賞をとりましたよ!

麻衣子、斎藤先輩もみんなもすごく喜んでるよ!



先輩たちもみんな抱き合って喜びを分かち合っていた。

後の高校の発表が何だったのかわからないくらい喜びに溢れてたんだ。




だけど、全ての学校の賞の発表が終わると、急に緊張感が張りつめた現実に引き戻されたような感覚になった。


審査委員長が一呼吸を置いて優勝校を発表する。


会場全体が息を飲んで静まり返った。



「全国大会への出場権を手にする優勝校は……





私立西山高校です」







西山高校の歓喜の声が会場に響き渡った。








落選した他校の生徒からは泣き声が聴こえてくる。







西山高校の部長が泣きながらステージに上がり、大きな金色のトロフィーを嬉しそうに受け取っている。



その姿を目の前にしている私は、そこに存在するのに存在していないような感覚で遼ちゃんの手を握っていた。





砂山先生が帰りのバスが来ていることをみんなに伝えるまで、誰もそこから動けなかった。





私達は…誰も何も言わないまま


ゆっくりと会場を後にしてバスに乗った。