朝、目覚まし時計で目が覚めるとすぐに遼ちゃんからメールが届いた。


『おはよう。起きてるかー?』

一言だけだったのに胸が張り裂けちゃうくらい嬉しい。


『おはよう!今日は快晴だね。集合時間に遅れないようにね!!』

メールを送った後、急いで準備して家を出た。

食べかけたパンをサブローにあげながらお姉ちゃんの部屋の窓を見ると、カーテンは閉まったままだった。


本当に別れちゃったんだね。

別れるとこんなにあっさり遠い人になっちゃうものなのかな…。


「サブローは恋したことある?」

サブローはパンを頬張りながらチラッと私の顔を見た後首を傾げた。


「サブローは恋よりパンに夢中かぁ…。
あっ、早く行かなきゃ!」

サブローの頭をクシャクシャと撫でて学校に向かった。





集合時間は7時半なのに、15分前にはほとんどの部員が揃ってた。


8時半に楽器をバスに積み込むまで、いつもと同じ基礎練習とコンクール曲を一度演奏する。

そのために出欠をとる前からみんな楽器を用意し始めてた。





「おはよう、葵」


既にトランペットを準備万端にした遼ちゃんが、窓際に腰を掛けていた。


「おはよう」


今朝メールで『おはよう』って伝え合ったことが、

なんだか二人だけの秘密の出来事だったように思えて嬉しかった。




朝の光を浴びている遼ちゃんが

なんだか眩しい。



私は遼ちゃんの微笑みに見惚れてしまっていた。





遼ちゃんの胸騒ぎに気づくまでは……。